
深見東州氏台本の創作バレエ上演、クリスマス・バレエ・ガラ

昨年12月開催「 どこにもない楽しさ、クリスマス時計宝飾展示会」(主催 : 一般社団法人東京芸術財団)最終日に上演された、クリスマス・バレエガラについて書きたいと思います。
第1部「オダリスク」と「ダイアナとアクティオン」
第1部の前半はバレエ「海賊」より「オダリスク」です。
オダリスクとは女性の奴隷のことです。3人の可憐なバレリーナが登場するパ・ド・トロワ(3人が絡む踊り)になります。
アントレ、第1~第3バリエーション、コーダの一連の踊りを見ることができました。バリエーションとは、舞台の真ん中で一人で踊る、バレエにとっての見せ場になります。
このシーンでは、女性の奴隷たちが、買い手の前で競売にかけられています。少しでも高く売れるように笑顔を強いられているのか、良い買い手に巡り合うようにと願う笑顔なのか、笑顔で踊る奥に悲哀を感じる場面です。
且股治奈さんら3人のバレリーナが美しく、クールに踊りました。

後半は、バレエ「エスメラルダ」より「ダイアナとアクティオン」です。
「エスメラルダの原作はヴィクトル・ユゴー作「ノートルダムのせむし男」です。原作に登場するジプシー美女エスメラルダと、彼女に恋する3人の男性にフォーカスして、バレエ作品にしたものです。
「エスメラルダ」の第2幕の中で、ストーリに関係ない、ディベルティスマンとして挿入され上演されるのが、「ダイアナとアクティオン」のグラン・パ・ド・ドゥになります。
この作品の中で最も人気があるそうです。
ディベルティスマンには「気晴らし,娯楽」という意味があり、バレエにおいては、 2人以上のダンサーが短い踊りを次々に踊り、小曲集のような一つのまとまりとなった場面のことを指します。物語からは独立しています。
かなり高難度の踊りだと思いました。それを渡部真衣さんと岡田晃明さんが、優雅に、時にダイナミックに、舞台いっぱいに踊りました。

第2部「影の王国」
第2部は、これも人気演目の「ラ・バヤデール」から「影の王国」です。
古代インドを舞台とするストーリーで、寺院の舞姫ニキヤを山本彩未さんが、ニキアと愛し合う戦士ソロルを杉浦恭太さんが務めました。
ソロルは主人である領主から、娘と結婚するように言い渡されます。ソロルは戸惑いつつも、娘のガムザッティの美しさにひかれ、結婚を承諾してしまいます。
しかしガムザッティは、ソロルとニキヤが愛し合っていることを知ります。最後にはニキヤを毒殺してしまいます。
結果的にニキヤを裏切り、死に追いやってしまったソロルが、その苦しみから逃れるためにアヘンを吸い、幻影(影の王国)を見る場面が「影の王国」になります。
幻影には美しいバヤデール(インドの舞姫)がたくさん登場します。そこにはニキヤもいます。ソロルはニキヤに許しを乞い、ともに踊りだします。

最初に登場する、精霊たちのコール・ド・バレエ(群舞)が大きな見せ場ですね。
一人、また一人と、次々真っ白なチュチュのバレリーナが、アラベスクをしながらクネクネと舞台を進んできます。(アラベスクとは片脚で立ち、上げた脚をまっすぐ後方へ伸ばすクラシックバレエのポーズ)
今回のセットに坂はありませんが、本来は坂を降りてくるそうです。ただでさえ一糸乱れず踊るコールドバレエが、ますます難しくなるそうです。
24人、多い時は32人で踊ることもあります。40回近くアラベスクをするバレリーナもいます。今回は12人のバレリーナによるコールドバレエですが、それでも乱れずにやるのは大変ですね。
しかしピッタリと息の合った、美しいコールドバレエをみることができました。幻想のシーンですから、幾何学的な踊りの中にも幽玄な世界観が表現されています。
そして、幻想の世界で踊るニキヤとソロルのパ・ド・ドゥ(男女二人の踊り)へと続きます。これがまたとても美しい踊りでしたね。
非常に難しい技術がたくさん入った踊りだったと思います。
今回も昨年に続き非常にレベルが高いバレエを無料で観れる、ありがたい一夜でした。
第3部「雌鳥と子供たち」
最後は、深見東州先生が台本を書かれた創作バレエ「雌鳥と子供たち」の上演です。
クラシカルな美を満喫したバレエから一転し、ほのぼのとした、笑みがこぼれる舞台へと変わります。
親鳥を演じるのは、前半は明るすぎる劇団・東州の鎌内美帆さんです。そして鳥に扮したたくさんのバレリーナが登場し、子供たちを演じました。
可愛らしい振付の踊りが見せ場の一つでしたね。通常のバレエでは見ることができない、コミカルな演出でした。
踊っているバレリーナからも楽しそうな雰囲気が伝わってきます。
東京シティ・バレエ団監督の中島伸欣氏の振り付けだけあって、バレエの動作をもとにしながら、いろいろなバリエーションの踊りがシューマンの曲にのって続いていきました。
後半は深見東州先生が親鳥に扮して登場されます。舞台に立つだけで、思わず吹き出してしまいました。
細やかな鶏の動きが笑いを誘いますね。卵を産むシーンは場内大爆笑でした。
いきなり大きな蛇が登場し襲いかかってくると、クライマックスシーンへと続きます。
深見東州先生作曲の「炎の舞」へと音楽が変わると、緊迫感がマックスになる中、親鳥は子供たちを庇いながら逃げ惑います。
そして親鳥に扮する深見東州先生が刀をとって戻ってくると、絶妙のタイミングで座頭市のごとく刀を一閃します。すると大蛇の首がボトっと落ち、場内が大いに沸いた見せ場となりました。
最後は大きな卵を前に、子供たちを守ることができたことに感謝するかのようにフェイドアウトして、物語はハッピーエンドで終わります。

ストーリーはいたってシンプルな、30分ほどの創作バレエでした。バレエに関心がない人でも十分に楽しめるよう、さまざまな楽しい工夫と演出が盛り込まれた作品だったと思います。
今回の「 どこにもない楽しさ、クリスマス時計宝飾展示会」では、毎回そうですが、敷居を低くしてラグジュアリーなジュエリー、高級時計を気軽につけやすいようにされています。
高尚な舞台芸術であるバレエも、敷居を低くした、面白く親しみやすい演出があってもいいのかもしれないですね。