
G20世界宗教サミット、4人の政治家の基調講演

第6回G20世界宗教サミット (G20 Interfaith Forum Japan 2019) における発言の中で、特別ゲストの人たちの提言について紹介したいと思います。今回のサミットでは、3日間かけて5つの公開パネルディスカッションと、22の非公開の分科会が行われました。
一般人の参加は、公開された5つのパネルディスカッションでした。その中から、今回は総合的なモデレーターを務めた半田晴久世界開発協力機構総裁(深見東州先生)とキャサリンマーシャル氏の挨拶、そして、デイビット・キャメロン元英国首相、エンダ・ケニー元アイルランド首相、ジョン・キー元ニュージーランド首相、そしてグラサ・マシェル氏による基調講演の発言の抜粋を、新聞掲載記事などから紹介します。
グラサ・マシェル氏は、モザンビークの政治家、社会人権活動家であり、ネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領が2007年に創設した、平和と正義、人権のために活動する世界的なリーダーによるグループ「The Elders」の一員でもあります。
半田晴久WSD総裁とキャサリン・マーシャル氏の挨拶
(サミット冒頭の半田晴久WSD総裁の挨拶より)
「9・11以降、世界の枠組みの変化とともに、世界が抱える諸問題は政治、経済だけではなく、宗教の軋轢も理解しなければ解決不能となりました。なぜなら現在、世界の85%の人々が何らかの宗教に関わりを持ち、そして複雑化する諸問題の75%は宗教と民族が絡んだ紛争なのです。
その解決のため、私たちは国連が制定した17項目に及ぶ『SDGs(持続可能な開発目標)』の達成のための議論を重ねてきました。今回は各界のオピニオンリーダーたちが集まり、さらに一歩、平和と希望への道を踏み出していきたいと思います。」
(キャサリン・マーシャル氏の挨拶より)
「信仰とは生命の尊重であり、宗教者には大きな信頼と責任があります。今こそ、世界の宗教コミニティが緊密な関係を築き、G20への責任ある提言を果たすべきです。」

4人のオピニオンリーダーからの提言~基調講演~
デイビット・キャメロン元英国首相
「G20に続き、8月にはG7が開催されます。ですが私も然り、2016年のG7から半数以上のリーダーが退任し、会議のメンバーは大幅に変わりました。このように、政治の世界は変化していくものですが、人類の脅威は変わることがありません。」と、継続的かつ多面的な議論の重要性に言及しました。
現在のグローバル化が人と人を繋げるのではなく、溝を作っているとも指摘しました。「我々は一体感を持ち共通の対応策を見出すべきです。国家間がうまく連携できるようにしなければなりません。」と述べ、その上で「多くの人々が取り残されている経済的な分断を修正しなければならない」と強調しました。
そして、過去SDGsの策定の際には、多くの人々が汚職や政治の腐敗などが原因で貧困から抜け出せないでいることを訴えてきたそうです。それは、「すべての人々に司法へのアクセスを、効果的で責任ある制度を」と掲げたSDGsの16項に結実します。
ちなみに英国はキャメロン首相時代に、国民総所得の0.7%を開発援助に拠出するという国連の方針に応じた、初めてで唯一の国となったそうです。
「経済成長とは指標ではなく、国民が自分の人生として実感できなければ意味がない」「政策とは協議だけでなく、誰もが慣れ親しめる形に落とし込まなくてはならない」
「世界が大きな脅威と戦える体制を整えるには、政治は宗教から学ぶことが多い。宗教団体は人と人とを繋げ、社会に重要な役割を担っている。」
「我々は崇高な目標を掲げているが、推進するにはリーダーシップが必要です。そのリーダーの責任とは、大衆に迎合するのではなく、人々の一体感や連帯感をいかに醸成できるかにある」などの発言がありました。

エンダ・ケニー元アイルランド首相
「母国アイルランドでは、100カ国もの国籍を持つ人々が暮らしており、学校でも1クラスで5つの国の子供が机を並べていたりします。国籍が違えども、一緒に暮らし、学び、仕事をしていく中で、人間的な絆が高まっていく。今こそ、人類共通の理念のために、手を取り合わなければなりません。リーダーの役割とは対立を煽ることではなく、世界を一つの家族とすることです。」と述べました。
そして、これまでアフリカの飢餓を救う組織を作って支援し、近年では地中海で移民を助ける活動をしているそうです。また、宗教と国家が協力し、市民会議を作り、同性婚の問題では国民投票で合法化を行うなど、「人々と協力して国の未来を決めている」そうです。
また、若い世代に情報を提供して参加してもらうことの重要性も説きました。その上で、G20は人々のために存在するもので、そこでの決定は世界に影響を与えるとして、「連帯、信念、信仰などをベースにして行動を起こしていかなければならない。そのために真の協力が必要になる」と述べました。

ジョン・キー元ニュージーランド首相
「私の国でも今年、痛ましい事件が起こりました。クライストチャーチのモスクでの銃乱射事件では、およそ50名の方が犠牲になりました。しかし、こうした醜い行動が人間の全てではありません。あくまで一部であり、人類において、最悪の行動よりも最高の行動の方が多いことを示さなくてはなりません。日本の広島、ナチスのアウシュヴィッツ、悲惨な歴史は起こりえることですが、それでも過去を許し、乗り越える力が人間にはあるのです。」と、人間の本質は善であるとして、未来への希望を語りました。
また、ニュージーランドでは、様々な宗教があっても一つにまとまっており、それを再認識して世界に発信することが大事だと考えていると述べました。
そしてニュージーランドのカンタベリー地震や、日本の東日本大震災などの悲惨な災害のことを例に挙げ、世界には困っている人たちのための、何千もの活動があることを紹介し、「私たちには希望があることを発信したい」と述べました。
最後に、このようなサミットでの議論がG20の指導者に届き、貧困やジェンダーの問題などの解決が進捗することに期待したいと述べ、「物事の本質を見極め、何が最も重要かを考えることが必要だ」と述べました。

グラサ・マシェル元モザンビーク教育大臣
「毎年、何百万人ものこどもたちがシェルターを求めて国外へと追われています。彼らの未来を奪ってはいけません。難民の子どもたちは、ほとんど中学校に行くことができません。これは、強制労働や性的搾取、少年兵などの虐待へとつながっていきます。」と、子どもたちの未来を守ることの重要性を強く訴えました。
また、子どもたちを救うには一人当たり年間113ドルあれば済むということで、「ユニセフ、ユネスコ、UNHCRなどを通じて、世界中の人々が連携していけば、すべての子どもたちに手を差し伸べることは可能なのです。誰も取り残してはいけません。そのためには行動が必要なのです。子どもたちの成長と教育が必要な期間は待ってはくれません。」と訴えました。
"There should be no higher priority for the world’s decision makers than special attention to the needs and care of refugee children"- Graça Machel #G20 https://t.co/w5fZB2OOwE
— GracaMachelTrust (@G_MachelTrust) July 1, 2019
グラサ・マシェル氏は、G20大阪サミットの後も、トムソン・ロイターから発信していました。世界で10億人以上の子どもたちが虐待や暴力、人身売買などに直面しており、その子どもたちに向けられた暴力への代償は7兆ドルに相当し、これは世界のGDPの8%に及ぶとしています。
したがって、この呼びかけは道徳的なものだけではなく、経済的なものでもあるとし、子どもたちへの投資は世界の将来への貢献になると書いていました。
その上で、多くの分野で進歩があるものの、まだまだ大きなギャップを抱え、課題の解決に必要な注意やリソースが満たされていない現状を訴え、世界の指導者は、この問題の解決よりも優先順位が高いものは無いとしなければならないと述べています。
そして、宗教に関連するコミュニティが、子どもや子どもの養育における家族、介護者を道徳的、精神的、実質的に支援し形作るのに重要な役割を果たし、世界的に子どもたちの保護に大きな貢献をすることができると述べました。
最後に、G20のアジェンダのすべての項目、および2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)は、この子どもたちへの健康と教育、幸福への投資を優先しなければバランスを崩すとして、世界の政治的な指導者や信仰の指導者、市民社会の指導者が、そして関与する市民と子どもたち自身も、この課題を解決するために協力しなければなりませんと訴えました。

これらのオピニオンリーダーたちからの提言は、これからの世界・社会をよりよくする上で重要なヒントになると思います。
月刊誌に掲載されたG20世界宗教サミットの記事
ここからは追記になります。月刊誌「TIMES」の2019年10月号、11月号に掲載された「G20世界宗教サミット」をレポートした記事を紹介します。

それは歴史的なサミットだった。大阪で開催されるG20大阪サミットに先駆けて、6月7〜9日、千葉市の「ホテルニューオータニ幕張」で、「G20世界宗教サミット」が開催された。NPO法人世界開発協力機構 =WSD (総裁半田晴久) とG20インターフェース・フォーラム・アソシエーションなどの共同主催である。
英国元首相のデイヴィッド・キャメ ロン氏はじめ、世界的な宗教人やリーダーたち約300人が一堂に会し、 議論を交わし、世界の様々な課題解決のための提言をまとめた。2日間の公開サミットには、延べ4000人の参加者で超満員となり関心の高さを示した。
半田晴久 (深見東州) 氏は、開催宣言はじめ全体会議のモデレーターなどをつとめ、このサミットをリードした。深見東州氏は、なぜこれだけの人を集め世界的なビッグイベントをオーガナイズできるのだろうか。益々巨人・深見東州の存在感は強まる。この公開サミットを二回に分けてレポートする。
「G20世界宗教サミット」開催。世界の課題解決を提案 公開サミット第一日宗教人や世界の各界のリーダーが集結した
「ジャスト・ドゥー・イット (やるしかない)、ネバー・ギブアップ (あきらめるな)、ビー・ザ・ディファレンス (変化をもたらそう!」 元英国国教会カンタベリー大主教口ード・ジョージ・キャリー氏は、公開サミット二日目の総括でこう呼びかけた。このサミットで世界の問題を解決していこうという、参加者の気持ちを代弁したものだった。
紛争、難民、人身売買、環境破壊と、世界には多くの難問題が山積している。それを解決するには、宗教の協力が不可欠である。宗教サミットが注目されているのもその点にある。
「G20世界宗教サミット」は、2014年からG20の開催国で毎年行れている。今年は6月末にG20大阪サミットがあり、日本がホスト国になったため、宗教サミットも日本で開催された。海外から宗教やオピ ニオンリーダー200人、国内から100人が集まって、三日間にわたって世界の諸問題を討議した (一日目は非公開)。その主宰を、 深見氏が総裁を務める世界開発協力機構 (WSD) が引き受け、G20インタ ーフェース・フォーラム・アソシエ ーションや関連団体と協力し共同開催したもの。
深見氏は、このサミットの目的をこう述べている。「この20〜30年の間に、世界の枠組みはどんどん変わっています。今年のG20宗教サミットでは、G20大阪 サミットの議題に合わせ、PPP (ピース、ピープル、プラネット) をテーマに、政治、経済、宗教の垣根を越え、世界の諸問題を創造的に議論します。そしてそれを、20カ国の政府に提言するのです」
それにしても、サミットに参加した、海外からの大物ゲストの顔ぶれには驚かされた。深見氏のオーガナイズの力に脱帽するしかない。元首相が三人。 デイヴィッド・キャメロン (英国元首相) 氏、ジョン・キー (ニュージーランド元首相) 氏、エンダ・ケニー (アイルランド元首相) 氏だ。三人はグラサ・マシェル (ケ ープタウン大学総長、故・ネルソン ・マンデラ大統領夫人) 氏とともに基調講演を行なった。
さらに特別ゲストとして、ノーベ ル平和賞受賞のデニース・コグラン (カンボジア・イエズス会難民サービスリーダー) 氏、 ロード・ジョー ジ・キャリー (元英国国教会カンタベリー大主教) 氏ら、宗教界を中心に多数のオピニオンリーダーたちが参加した。キリスト教も、イスラム教も仏教も、あらゆる宗教の枠を超え、政治のリーダーとともに世界の諸問題について話し合う場なのだ。深見東州氏はもともと、宗教の垣根を越えて 連携しあうことが大事だと考えてるから、このサミットの主宰は適役と言える。
世界宗教会議に先立ち、深見氏は フランシスコ・ローマ法王に謁見したという。このサミットにも、ロー マ法王から力強いメッセージが届い た。ところで、会場内ではお弁当コー ナーが設けられた。「ハンバーグ弁当」、「ベジタリアンの弁当」、「グルテンフリーの弁当」、「助六寿司」などが用意された。ベジタリアンもムスリムも、好みのお弁当を選んで食べられる。「食が大事」と言う、深見東州氏ならではのおもてなしに、 サミット参加者は大喜びだった。
基調講演とパネルディス カッションで、諸問題の解決と実行に向けての提言
二日間にわたる公開サミットは、 それぞれテーマごとに全体会議で構成され、海外国内の宗教、政治のリーダーが基調講演やパネルディスカッションを行った。
第一日目 (6月8日) に諸問題解決のアイディアを探り、第二日目 (6月9日) にはその解決のための実行と提案を討議した。第一日目は次のような全体会議がもたれた。◎全体会議「フォーラム2019の発足式 平和、人類、地球のための貢献 : G20の課題」
◎全体会議「我々はなぜ平和と人類と宗教が関わることで変革を進め地球に希望をもてるのか ?」
◎全体会議「行動アジェンダ 現実に基づく経験からアイディアを試行する」
最初の全体会議では、モデレーターの半田晴久 (深見東州) 氏が、日本の正装である羽織袴姿で登場し、挨拶をした。半田氏は、今や宗教の視点を抜きに、世界の諸問題の解決は難しいという主旨で、今大会で討議すべき次の3つのテーマをあげた。
一 、貧困や飢餓、教育など17項目に及ぶ国連目標SDGs(持続可能な開発目標)について、政治、経済、宗教の枠を超えて達成できるような、創造的議論を行う。
二、 世界の55%の人々が、 何らかの宗教に関わりを持つ。それ故、その果たすべき役割は大きい。
三、宗教と民族の絡んだ紛争の解決策。
キャサリン・マーシャル (WFDD所長) 氏も挨拶で、次のように述べた。
「世界には恐れ、苦しみ、悲しみがあり、子どもや女性が蹂躙されている。世界の85%の人が、何らかの形で宗教に関わっていることを考えると、宗教が関わることで変革を進められる。宗教者には、大きな信頼と 責任がある。今、世界の宗教コミュ ニティが緊密な関係を築き、G20への責任ある提言をすべきである」と。第一日目の基調講演は、英国元首相・デイヴィッド・キャメロン氏で あった。
キャメロン氏は、移民や貧困による社会的対立の解決に挑んだ経験を語り、「戦争、貧困、テロなど脅威は変わってない。安全保障が大事だ」。そして 「グローバル化の問題は大衆迎合主義が強まったことで、人と人との間にかえって溝をつくって しまった」と問題点を指摘。「国家どうしが連携して共通の対策を考え、 社会的分断を阻止するべきだ」と語った。キャメロン氏は、深見東州氏と共に社会貢献に力を尽くしてきた間柄 で、これからも宗教と各国リーダー が手をつなぐ力になっていくだろう。
◆第一日目のパネルディスカッショ ンでは、問題の提起と行動のアジェンダが討議され、特に移民、難民とテロ、また環境問題などが取り上げられ、熱い議論が交わされた。
最初の全体会議では、ファイサル ・ビン・アブドルラーマン・ビン・ムアマール(KAICIID事務総長) 氏が、「宗教は不安と不信の壁を取り除ける。宗教が問題解決の主な役割をはたすべきだ」と、宗教サミットの大きな可能性を述べた。
二番目の全体会議では、3人の首相経験者とグラサ・マシェル氏が討議を交わした。特にグラサ・マシェ ル氏が「移民や難民がテロの危険を拡大すると言われるが、区別しないといけない。現代のテロはSNSを通じて広がる。若い世代が、適切な選択を出来るような教育支援が必要である」と教育の大切さを強調した。
最後の全体会議では、萩生田光一内閣官房副長官が、安倍内閣総理大臣の名代として登壇。日本政府の国際貢献への取り組みと、宗教サミットへの期待を伝えた
そしてパネルディスカッションでは、末日聖徒イエス・キリスト教会 十二使徒定員会の、ゲレット・W. ゴング長老は、昭和天皇が「私の庭でなぜ蝶を見かけなくなったのか」 と問われたことで、日本が環境保全に意識を向けた、というエピソードを紹介。インパクトのある問いかけが、社会に変革をもたらすことを語り、感銘を呼んだ。随所で、深見東州氏の挨拶やモデ レーターとしての巧みな進め方が、 円滑な進行を導いた。こうして、第 一日目の問題提起が活発に行われ、 第二日目につなげた。深見氏は、このサミットでまとめた宗教界からの 提案を安倍晋三首相に届けると述 べた。
編集部注釈世界開発協力機構 (WSD) はこれまで様々なサミットを開催してきた。世界オピニオンリーダーズ・ サミットでは、第1回にトニー・ブ レア元英国首相。第2回に、ビル・ クリントン元米国大統領とコリン・パウエル元米国国務長官。第3回は、トニー・ブレア元英国首相とジ ヨン・ハワード元豪州首相ら。第4回は、バラク・オバマ元米国大統領を招聘し熱い議論を交わした。
「G20世界宗教サミット」 公開サミット第二日
白熱した議論が続いた。宗教こそが世界の課題の解決の道を見出せる
6月9日宗教サミット第二日目は「諸問題を解決するための実行と、2020年に向けての提案」を3つの全体会議の中で討議した。
◎最初の全体会議「実行のための提案」
サミットの会場では、場内整理をするスタッフが忍者姿で、キビキビと活動している。その姿が、各国の参加者の目を引いた。深見氏は「世界の人は日本に忍者がいると信じている人もいます。その夢を裏切りたくないのです」と言う。堅い会議を和らげる、深見東州氏の巧みな運営のおかげで、参加者も活発な討議を交わした。
この日はグラサ・マシェル(ケープタウン大学総長)氏と、ジョン・キー氏 (ニュージーランド元首相) の基調講演が行われた。
グラサ・マシェル ケープタウン大学総長は、具体的に、ロヒンギャの何百万人もの難民がキャンプでつらい生活をしていることにふれ、特に「難民の子供たちは未来を奪われている。難民の子供たちにフォーカスを当てて、教育の機会を与えるべきだ。そのためには、力を合わせて、 マルチセンターの開設が必要だ」と強調した。そして、「質の良い教育で、 政治経済の格差や男女の教育格差と いったギャップを埋めることに、宗 教団体が貢献することが可能である」と語った。
サー・ジョン・キー氏 (ニュージ ーランド元首相) は、今年3月にクライストチャーチのモスクで起きた銃乱射事件や、インドネシアの津波、東日本大震災などに触れ、「世界には困っている人のための何千もの活動がある。だから、私たちには希望がある」と語った。
パネルディスカッションでは、問題解決の方策を討議する中で、政治と宗教、宗教間の協力の大切さが語られた。
シュシュトローム・イサーク・クリータダム氏 (ヴァチカン統一的人間開発局エコロジー部長)が、「地球は共通の家、人間は共通の家族であることを再認識しよう。2020年を地球の年にし、宗教は弱者を守ることをG20に伝えたい」と提言した。
◎二番目の全体会議 「2020年に向けて」では、エンダ・ケニー氏 (ア イルランド元首相) が基調講演をした。エンダ・ケニー氏は、「言語や宗教を異にするリーダーたちが、 ともに関わり合いながら理解を深めてきた。地中海におけるシリア難民の救助活動にも努めている」と語り、「世界は一つの家族だ」、「他者に対する思いやりがあってこそ人間である」と、SDGsに関わる人たちが 協力することの大切さを語った。
パネルディスカッションでは、フ ァン・ナバッロ・フロリア氏 (教皇 庁立アルゼンチンカトリック大学法学部教授) は、「多くの宗教的リーダーが関与することで、メッセージの説得力が強まる」と述べた。
また、 アブダラ・アル・フメイド氏 (サウジアランビア国家宗教間・文化間対話委員会委員) が、「今回参加の首相経験者ら、政治的リーダーと一緒に討議し、宗教の声を発信したい」 と述べ、宗教界の『予言の声』を伝える役割を強調した。
これを受けてパネリストたちが、 環境問題、難民、人身売買にふれ、 人権が守られるために、宗教の役割 が重要だと語った。またG20大阪サミットに、メッセージをいかに伝えるかの議論がなされた。
このサミットを通じて、「難民や子供たちを暴力からいかに守るか、また子供たちにどうしたら十分な教育を受けさせられるか」という議論が多かった。
神道と七福神─日本精神が世界をリードするか
最後の全体会議は、「閉幕と総括」 が行われた。宗教サミットの「総括」に先立つ挨拶で、主宰者の半田晴久氏 (深見東州氏) が熱い気持ちを語った。日本人の精神構造は神道にあり、神道が分かると日本人が分かる、というところから話し始め、こう続けた。「ユダヤ教に一番近いのは神道です。 神の祝福するところは、生業が栄え、 家やコミュニティが栄えるというものです」。
宗教家としての、深見氏の造詣の深さが表れ出る。 「室町時代の七福神思想は、七人の 『ラッキーの神様』が一つの船に乗っていく。布袋様も福禄寿も寿老人も中国由来の神様で、弁天様と毘沙門天はインド由来。 また、恵比寿様が、唯一の日本の神なのです。それらの神様が、一緒の船で行くということは、アイデンティティはどうでもいい。幸せを呼ぶ神様なら、みんな一緒でいいんじゃないか、という思想なのです。それが日本人の考え方です。他の宗教を排除しません」。そして、「ハイテクと神道が共存共栄するという所が、日本人のメンタルにあります」と説く。こうした、多様性や融合性を受容するのが日本人である と言う。
この宗教サミットは、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教、神道、仏教という多様な宗教人が、 共通のテーマで議論を戦わせた。だ からこそ、「神道と七福神という日本精神、日本人のメンタリティが、 世界の諸問題に対応し、解決する柔軟性を持っている」と深見氏は言うのだ。
「総括」では、キャサリン・マーシャル氏が、「G20宗教サミットの総括を5つの提言にまとめたい」と言い、宗教と紛争の解決に対し平和の構築をはかり、宗教が平和にかかわるようにしたいこと。子供たち、とくに移民、難民への教育の場の提供。 熱帯雨林など地球環境問題。法秩序や人権問題。特に人身売買の問題への提言などをあげ、宗教の役割として、教育の提供や女性の役割の拡大に努めることを提言した。
そして再び深見氏が立ち、次のように締めくくった。「日本人は、自然の中にある命の尊さと、命の美しさに感動します。自然の中にスピリットを感じます。そして、それを感じない所は開墾して、畑や田にして生活に生かします。 だから、神社には必ず森と水があるのです。森は邪気を払い、新鮮な水には神気が宿ります。日本人に古来からある、神道の精神で、宗派の別なく、世の中をよりよくするように協力したい」と。
今回深見氏がこの世界宗教サミットに果たした役割は大きい。 筆者はサミット会場にいた、アメリカ人女性にこう尋ねられた。『私はアメリカの団体で広報関係の仕事をしていますが、ハンダさんという人はどういう人なのですか。これだけ世界のリーダーを呼んで、サミット開催をまとめる人ってすごいことです」と。いまや半田晴久氏 (深見東州氏) は世界からも「この人物は何者なの ?」と思われる人なのだ。ロード・ジョージ・キャリー氏が最後に呼びかけた言葉、「ジャスト・ ドゥー・イット、ビー・ザ・ディフ ァレンス」は、今回宗教サミットで多くの人が口にした、「課題をあげるだけではなく、行動し変革を提言することこそ大事だ」と言っているのだ。
「世界の人たちを幸せにしたい」。そう願う深見東州氏が語ったように、 共存共栄をモットーとする日本精神こそが、世界の諸問題を解決する思想になるのではないだろうか。幸せを呼ぶ、七福神のような深見にかかる期待は、ますます大きい。