
2022「ハンダ・オペラ・オン・シドニー・ハーバー」は『オペラ座の怪人』が新たな歴史を作る

今年の春のイベントになりますが、3月25日から4月24日まで、オーストラリアのシドニーで、「ハンダ・オペラ・オン・シドニー・ハーバー」が開催されました。
ハンダ・オペラ・オン・シドニー・ハーバーは、シドニー湾に面した王立植物園の敷地内に、湾上に突き出るように特設ステージが設けられ、シドニー・オペラハウスなどのシドニー湾の美しい夜景を背景に、国立オペラ・オーストラリアによる歌劇が毎年1作品、ほぼ一月間にわたり上演されます。
世界トップクラスのオペラに加え、オペラのテーマに沿ったご当地料理が毎年用意される高級レストランがあり、夕日と夜景、シャンパン、そして花火などシドニーが誇るすべての要素が融合された、世界中からセレブが見に来るイベントだと言われています。
そのステージを、深見東州先生が会長を務められるNPO法人世界芸術文化振興協会(IFAC)が、最初からずっとサポートしてきました。ヴィクトリア州政府も、シドニーの観光の目玉としてサポートしています。
2012年から順に、『ラ・トラヴィアータ』『カルメン』『マダム・バタフライ』『アイーダ』『トゥーランドット』『カルメン』『ラ・ボエーム』『ウェスト・サイド・ストーリー』が上演され、2020年はコロナで中止になりますが、昨年2021年は再び『ラ・トラヴィアータ』が上演されました。
2022年は世界的な人気作品『オペラ座の怪人』
そして今年2022年は、あのアンドリュー・ロイド・ウェバーの『オペラ座の怪人』が上演されました。初日にはロイド・ウェバーも姿を見せています。
主役となる配役は、ファントム役にジョシュア・ロブソン。ヒロインのクリスティーン・ダーエ役にジョージナ・ホプソン。クリスティーンを愛し、ファントムと対立するラウル役にはカラム・フランシスが抜擢されています。
3人ともビッグネームのスターではありませんが、実績十分の実力派になるとのことです。ロイド・ウェバーの作品に出演するからには、それ相応の力量がないと出演できないでしょうからね。
このロイド・ウェバー(音楽/台本)、リチャード・スティルゴー(台本)、チャールズ・ハート(作詞)によって書かれた『オペラ座の怪人』は、1986年にロンドンのウエストエンドで初演され、13629回という驚異的な公演回数を記録しています。
1988年からのブロードウェイ公演は現在も続き、これまでに13509回の公演を記録しているとのことです。
この『オペラ座の怪人』のオリジナルキャストが、ロイド・ウェバー2度目の結婚相手となるサラ・ブライトマンでした。ヒロインのクリティーヌ役はサラ・ブライトマンのために作られたと言われています。
鬼気迫るようなパフォーマンスで、サラを一躍スターダムへと押し上げました。
深見東州先生の友人で、オペラ・オーストラリアの芸術監督であり、オーストラリアIFAC会長でもあるリンドン・テラチーニ氏が、この世界的な人気作品を、ハンダオペラ・オン・シドニーハーバーに持ってくることに成功します。
ちなみに、来年2023年は『マダム・バタフライ』の公演がすでに決まっているそうですが、リンドン・テラチーニ氏も2023年末でディレクターを退任することが決まっているとのことです。

この世界的な人気作品『オペラ座の怪人』ですが、このような大規模野外公演は初の試みで、室内の公演に比べてさまざまな課題があったそうです。
それを演出家として選ばれたサイモン・フィリップス氏が、斬新なアプローチによって、ロケーションを活かした壮大な演出に仕上げました。
室内公演との違いによる変化や、これまでの『オペラ座の怪人』の楽しさなどを、みごとに融合させたスリリングな舞台になったと、目の肥えたジャーナリストや評論家も満足させる高い評価を得ていました。
歌手や俳優たちの評価、演奏のレベルもとても高い評価を得ていました。
現地に行かなくては、見ることができないのが残念ですね。
この『オペラ座の怪人』は、1909年に初出版されたガストン・ルルーの小説が原作になります。闇、死、廃墟、神秘的、異端的、退廃的といったゴシック的なテーマが、20世紀という世紀末に向けての大きな変化に対する人々の不安を映し出し、瞬く間に人気を博したそうです。
今風に言うとダーク・ファンタジーとロマンスを融合させたゴシック小説というところでしょうか。
ハンダ・オペラ・オン・シドニー・ハーバーで上演されたストーリー
この日演出されたストーリーを書いておきます。
舞台はパリ・オペラ座が記念品をオークションにかける夜から始まります。
シャニー子爵のラウル(カラム・フランシス)は、奇妙なオルゴールを落札しますが、次にシャンデリアが競売にかけられると、 物語はそのシャンデリアがオペラ座のドームに華麗に吊るされていた頃の、ラウルの若き日に引き戻されていきます。
オペラ「ハンニバル」のリハーサル中に、舞台装置が謎の落下を起こし、主演のカルロッタ(ナオミ・ジュディチェッリ)が危うく死にかけます。
劇場での事故はこれが初めてではないので、彼女は役者を辞めようと暴れ出します。
マダム・ジリー(マリー・ジョンソン)は新しい支配人に、給料と座席を要求し、「オペラ座に住むゴースト」からの手紙を手渡します。

クリスティーヌ・ダエ(ジョージナ・ホプソン)は主役のオーディションを受け、初日の夜、若いラウルはこの新しいスターを見て熱狂します。
音楽の天使から声のトレーニングを受けていると言うクリスティーヌは、自分とラウルが幼なじみであることに気づきます。

音楽の天使は、オペラ座の地下のカタコンベに住むファントム(ジョシュア・ロブソン)であるとクリスティーヌに正体を明かします。
そしてファントムは、彼女を地下の隠れ家に連れて行き、彼女がファントムにオペラを作曲するインスピレーションを与えていることを明かします。
そして、ファントムは彼女の優しい心を見抜き、彼女を解放することを決意し、クリスティーヌをカルロッタの代わりに次のオペラの主役にすることを支配人に要求します。
しかし支配人たちはこの要求を無視し、ファントムは災いをもたらすという脅迫を実行に移し、ブピュエの死体が上から吊り縄で落とされます。
クリスティーヌは逃げることに同意しますが、ファントムは復讐を誓い、シャンデリアがキャストたちの上に墜落し、花火が打ち上げられます。

新年を祝う仮面舞踏会のとき、オペラ座の皆々は驚きました。ファントムが戻ってきて、自分の新曲をオペラ座の次の作品にするよう要求してきたからです。
ラウルは主役のクリスティーヌを使って、ファントムを罠にかけます。
ラウルへの愛とファントムへの畏敬の念の間で揺れ動くクリスティーヌは、父の墓を訪れ、父の導きを待ち望みます。その時、霊廟の上にファントムが現れ、クリスティーヌはファントムに服従しようとします。
ファントムは火の玉を投げつけてラウルを挑発し、クリスティーヌはラウルに一緒に出て行ってほしいと懇願します。ファントムは怒って、二人に宣戦布告をします。

クリスティーヌはオペラ「ドン・ファンの勝利」に出演しますが、実は彼女の相手役がファントムであったことが判明すると、クリスティーヌはファントムのマスクを外し、観客にファントムの醜態をさらします。
地下の隠れ家で、ファントムはクリスティーヌにウェディングドレスを着るよう迫ります。彼女は、彼の外見ではなく内面が怖いと告げると、そこにラウルが現れますが、ファントムに捕らえられます。
ファントムはクリスティーヌに、もし一緒にいてくれるならラウルを助けるが、拒否するならラウルは死ぬ、と最後通牒を突きつけます。するとクリスティーヌはファントムに「一人じゃない」と言い、キスをします。

初めて優しさと思いやりを知ったファントムは、ラウルを解放します。そしてクリスティーヌに愛を告げると、クリティーヌはラウルと共に涙ながらに隠れ家を後にします。
暴徒が押し寄せる中、ファントムはマントの下にある玉座に身を隠します。メグは真っ先に隠れ家に入っていき、ファントムの玉座に近づいて、マントを引き剥がすと、そこにはファントムのマスクだけがありました。
今年のシドニーは天候が大荒れの日も
この公演時期の天候は、ラニーニャ現象の影響を強く受けていて、シドニーがあるニューサウスウェールズ州北部では洪水と豪雨が続いていたそうです。
幸い、初日の公演は雨が降ることもなく、そよ風が吹く快い天候の中で大成功に終わったそうです。
しかし、中には風雨にさらされる公演もあったようです。例年、もともと少々の雨は予期した上で、雨天決行されてきたそうです。
公演は雨が降ってもできるように設計され、安全管理もされているそうです。観客もそれがわかっているので、雨が降るとポンチョをまとって最後まで観るのだそうです。

ただ今回は、あまりに土砂降りのため、途中で中止せざるを得なかった公演があったそうです。野外ですから、覚悟の上で出演している演者たちも、目を開けることもできなかったというほどの酷い雨だったようですね。
主役のホプソンさんは、「ドレスは水でびしょびしょになって重かったから、座らなくちゃいけなかったの。 私の仕事はヤバいのよ」と、ポジティブに受け止めてはいたようです。
「風や雨は、その空間での存在感を変えるので、絶対に考慮しなければならないことですが、雨の中で演じるのは本当にスリリングです。ただでさえメロドラマ的な作品なのに、雨や風はドラマをさらに盛り上げてくれます。雨や風は、作品をよりエスカレートさせると思います。雨に降られるのが好きだし、嬉しいんです」と、素晴らしいプロ根性を見せてくれていますね。
土砂降りの中で見ていた観客たちも、「私たちはずぶ濡れになったが、雨の予報だったので覚悟してきた」とのことでした。
この激しい雨の中のステージの動画を見た人たちは、「雨も演技の一部だと思った」とジョークを飛ばしていました。
「シュールな経験だし、なんて素晴らしいショーなんだ」「雨はシーンを盛り上げると思うが、すべてを乾かさなければならない舞台スタッフ、衣装の人たちはかわいそうだ」というコメントもありました。
雨はまるでショーの一部であるかのように見えたと言う人たちも、この公演が屋外で行われたことがわかると、公演を屋内に移そう、近くのオペラハウスに移そう、と同じジョークを言わずにはいられなかったようです。
「もしシドニーに芸術を上演するための屋根のある建物があったらと想像してみてください。シドニーオペラハウスと呼べるかもしれない」などと冗談を言う人もいました。